Street Ball
色々な事を一遍に聞かされた俺は、エントランス脇の植え込みに腰を下ろした。


火を付けたスピリットの煙と、溜め息を同時に吐き出す。


通り過ぎる車のヘッドライトに照らされ、煙は僅かに黄色がかっていた。


「俺が未だ小さかった頃にな、富さんが近所に引っ越してきたんだ。格好良くバスケをしている富さんに憧れて、何時も一緒に居る碧さんにも憧れてた。お前と翠ちゃんは、そんな昔の富さんと碧さんにそっくりだよ。」


「だから翠にちょっかい出そうとしたのか?」


俺の横に座わり、少し照れながら頷くアキを横目に見た。


そんなに憧れた人なら、アキは何故一緒に行かなかったのだろう。


その前に、どうして富さんの復讐を不完全に終わらせたのだろうか。


「夏目と初めて[SB]のコートで会った日な、本当は富さんに呼ばれてたんだ。漸く復讐のタイミングが来たってな。夏目の、バスケがしたくて堪らないって目を見て、昔の富さんと同じ目をしてるって思った。側で見続けてきたから気付かなかったけど、今の富さんは俺が憧れた富さんじゃない。だから付いていこうとは思わなかった。」


「俺の考えてる事読んだのか?」
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