Street Ball
「聞きたそうな顔してたからな。」


そう言ったアキは、やはり掴み所のない笑顔をしていた。


この笑顔の裏にも、思う事は沢山有った筈なんだ。


「富さんさ、誰とも関わり合いにならないように、何時も素っ気なくしか答えなかったろ?あれも相手に情が移らないようにって事だったんだ。でも、俺はそう出来なかった。顔見知り程度の奴だって、警察に捕まって欲しくはないからな。」


昨日、俺と会った時に言いたかった事は、この事だったんだろうな。


アキも、誰かに話しを聞いて欲しかったんだ。


「じゃあ、昨日富さんから復讐を実行するって言われたんだろ?」


「あぁ。それまで詳しい日にちは決まってなかったんだけど、ロンの奴が夏目と接触を持ったりしてたろ?実行するなら今。丁度決勝でギャラリーが一番集まる日だったしな。富さんにとっては打って付けの日だったんだよ。」


アキの言葉に、納得しながら煙を吐き出した。


長くなった灰が、夜風に揺られて地面に落ちる。


結局、俺は富さんと碧に振り回されてたんだな…。
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