Street Ball
二人の背中が見えなくなるまで見送り、錆び付いた階段を上った。


自分の家に入るのを、少し戸惑う。


深呼吸を繰り返し、玄関のドアを開いた。


狭い茶の間を抜け、自室に入る。


此方を背にして座っている翠が、何時もより小さく見えた。


「…二人は?」


「帰ったよ。」


重々しい空気の中、翠の前に腰を下ろす。


翠の窶れた頬や、覇気のない表情を見ていると、酷く胸が痛んだ。


何処から話せば良いのだろう…。


「あの人とはどうなったの?」


「どうなったっていうか…この街を出てったみたい。ごめんな翠。碧と浮気した事も、その所為で傷つけた事も、こうやって話しするのを待たせた事も…本当にごめん。」


翠の肩が小刻みに揺れる。


大きな瞳から零れ出した涙が、雫となって次々に手の上に落ちた。
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