Street Ball
「私じゃダメだった?だから、あの人の所に行ったの?」


そうだと思って、今日まで翠が自分を責め続けてきたのだと悟った。


「ごめん。翠の存在が近すぎて、その大切さを気付けなかったんだと思う。もっと早く、こう言うべきだったと思ってる。遅すぎたな…。」


本当に大切なものは、俺の周りに沢山有った。


毎日寝起きしているこのおんぼろアパートも、お袋が築き上げてくれたもの。


他人に誇れるような家じゃないけど、誇る必要なんて何処にもない。


仕事の時間の都合で、お袋とはすれ違う日々だけど、目一杯の愛が俺には注がれてる。


それは目に見えないから見落としがちだけど、気付いた時の大きさには、お袋に感謝せずにはいられないものだ。


そして翠も、今までは何気なく一緒に居たものだから、その大切さを見落としていた。


ただ隣に居てくれるだけで、気持ちが穏やかになる。


それが、俺の本当の居場所。


片方は、今失ってしまうかもしれないけど…。


それも自分の所為だと思うと、納得する他は無い。


「遅くなったのなんて、たかが一週間ぐらいでしょ?そんなの、私が双英の事を好きだった時間に比べればどーって事無いよ。」
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