Street Ball
「それって、何時から?」


俺よりももっと前に、翠は大切なものに気付いていたのか…。


いや、俺が気付くのが遅かったんだな。


「もう何時からか覚えてないよ。気付いた時には、双英が側に居てくれたからね。」


泣き顔の中に、一瞬だけ覗いた笑顔。


漸く気付けた大切な存在を、失いたくない。


そう思うよりも先に、俺の腕は翠を包んでいた。


以前よりも細くなった翠の身体。


心の中で何度も謝りながら、翠を優しく抱き締める。


自分勝手だと罵られようとも、この腕に収まる大切な存在を、失ってしまうのが堪えられない。


「…もう絶対何処にも行かない?」


「何処にも行かない。俺の居場所は此処だって、翠のお陰で気付けたから。ごめんな。そして、有り難う。」


抱き締めていても、翠が嬉しそうな笑みを零してるって分かる。


それを感じると、俺も自然と笑みが零れた。
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