Street Ball
人気が無くなった通りから、這うようにして店内へ戻る。


翠は立ち尽くしたまま、声を殺して泣いていた。


Tシャツが陳列された商品棚を掴み、やっとの思いで立ち上がった俺は、レジ奥へと足を引きずったまま歩いていく。


「おぉ〜随分酷くやられたな。Street Ballはどうだった?」


雑誌を閉じて、俺の顔をサングラス越しに見つめる瞳は、面白い物を見つけた子供のようだった。


そんな言葉と視線を無視し、黄ばんだ壁に背中を任せる。


「…Street Ballってなんだよ。あんなの聞いてねぇーぞ。」
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