Street Ball
いつの間にか抵抗する事を止めていた翠は、俺の頭を赤ん坊でも抱き締めるかのように、優しく優しく包んでいる。


安心感に包まれた俺は、無我夢中で翠の小さな身体を突いて揺らしていた。


痛みなど何処かに置き忘れてきたように、部屋には俺の吐く激しい吐息だけが響いている。


破壊活動は、翠の上で果てた瞬間に終わりを告げた…。


テーブルの上に有るアルミ製の灰皿の中で、吸いかけだったスピリットは白く燃え尽き、周りの吸い殻に火種を移している。


背後で立ち上る一筋の紫煙だけが、その全てを見ていた…。
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