Street Ball
「居ない…良かった…。」


翠の姿を探そうと、起こした身体が軋む。


関節が錆び付いたロボットになった気分だ。


あっさり重力に負けて、身体を万年床の煎餅布団へとへばりつかせる。


「何が良かっただ!誰が寝て良いって言ったんだよ!」


お袋の口から吐かれる金切り音が、より一層物少なな部屋に響き渡る。


…最悪な朝だ。


顔だけを立ち尽くすお袋の方に向ける。


足蹴にするような蹴りが、黒いスーツのミニから白い物をちらつかせた。


…それも加えて、最低な朝だ。
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