Street Ball
肌で弾いた残りの水分を、長年使っているタオルで拭き取った。


瞳の奥が深紅に光るドクロが描かれた、黒いロック調のTシャツに、ダメージの入った白いデニムを合わせる。


リングやブレスレットは付ける気にならず、クロスの中心にレッドストーンをはめ込んだネックレスを下げた。


玄関に向かうと、昨日は気付かなかったが、ジョーダンのソールが剥がれかけている。


長年履き続けたバッシュなら、コンクリート上で激しく動けばこうなっても仕方ない。


そうは理解出来ていても、舌打ちしながらその脇に有る、白とゴールドのスタンスミスに足を通す。


バスケをしていれば、場所が変わればボールもリングも変わる。


だが、バッシュだけは変わりはしない。


相棒と同じ存在だ。


相棒を失ってしまった消失感のまま玄関の鍵を閉め、錆の浮いた手摺りに掴まりながら、階段を下りていく。


最早時間の問題となった夕日は、建物に隠れて見えはしなかった。
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