Street Ball
気付けば寝てしまっていた俺を起こしたのは、一年ぶりにセットした目覚まし時計のアラームだった。


次第に激しさを増していく電子音を止め、脱ぎ捨ててあったデニムからスピリットを取り出す。


着火石を親指で回し、最初に吸い込んだ煙を宙に泳がせる。


磨り硝子越しの外からは、晴天と小鳥のさえずりが視覚と聴覚に届き、初夏を感じさせるにはピッタリだった。


ゆっくり一本のスピリットを吸い終えると、軽めのストレッチで眠気を身体から完全に追い払う。


ナイロンの上下に着替え、お袋が仕事から帰ってくる前に、枕元に置いていたバッシュを持って家を出た。


少し肌寒さを感じる、初夏の朝。


足下には昨日買ったばかりの、真新しいジョーダン。


徐々に朝日とは呼べなくなった太陽が、身体と新たな相棒に熱と光を当てる。
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