一生もんの道化師
それほど深く追求するつもりはなかったようで、高藤さんはその一言で会話を終了させると、すぐにまた目の前の端末に視線を戻した。


「あの…」

「ん?」

「良かったら、何かお手伝いいたしましょうか?」


実はこれが本日の最終目的だったりする。


せっかく二人きりになれても、その夢の時間がすぐに終わってしまったりしたら悲しすぎるもん。

一分一秒でも長く側に居られるよう、前もって考えていた口実だった。


ただ、チャンスには恵まれても、それを活かしきれないのが私の宿命ってやつで……。


「ありがとう。でも、一人で大丈夫だから」


嫌な予感は的中し、高藤さんは視線をディスプレイに向けたまま、マウスを小刻みに動かしつつ私の申し出をあっさりと辞退した。


「分担してやるほどの仕事量でもないし。それに白石さん、もうタイムカード通しちゃったでしょ?サービス残業はマズイから、気にしないで早く帰りな」

「そ…そうですね」


ダメだこりゃ。


とてもじゃないけど、これ以上は会話が膨らませられない。


もう私がここに残る理由はなくなってしまった。
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