一生もんの道化師
お仕事の邪魔になるだけだし、今日のところは速やかに退散することにしよう…。


「あ」


すごすごと、出入口に向かって歩き出そうとしたその時、高藤さんが机の端に置いてあった紙コップを手に取り、口元に運ぼうとして動きを止め、小さく声を発した。


「何だ、空か…」


次いで、ポツリと呟く。


どうやら喉を潤そうとして、すでに中身が無くなっていた事に気付いたらしい。


そこでピン!と閃いた。


「おかわり、持って来ましょうか!?」

「え?」

「それ、飲み終わってしまったんですよね?新しいのお持ちしますよ。何が良いですか?」


顔を動かし、私と視線を合わせた高藤さんは目をパチクリさせながら言葉を繋いだ。


「えっと…。飲むとしたらホットのブラックコーヒーだけど…」

「コーヒーですね?分かりました!」


それ以上何かを言う隙を与えないように、肩からかけていたバッグをデスクの上に置くと、私はマッハで喫茶コーナーへと向かった。


やったね!

どさくさに紛れて自分の飲み物も持って来れば、それを飲み終えるまで高藤さんと一緒に居られる!
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