一生もんの道化師
コーヒーを淹れるといっても、自分で一から準備する必要はない。


ウチの社ではいつでも手軽に温かいお茶が飲めるよう、各階の給湯室前のスペースに給茶機が設置してあった。


『それ以外の飲み物を飲みたい場合は自腹でどうぞ』という事で、自動販売機も二台用意されていて、それらを取り囲むように四人掛けの長椅子が三つ、置いてあった。


そこでちょっとした休憩が取れるようになっているので、社内では通称「喫茶コーナー」と呼ばれている。


ちなみにそのスペースは廊下の突き当たりに位置していて、パーテーションで仕切られているので通行の妨げになるような事はない。


給茶機の前までたどり着き、コーヒーを淹れ終わってから、ちょっと迷って自分用に紅茶のボタンを押した。


それが注がれている時間を利用して、給茶機の横の洗面台に身を乗り出し、鏡でヘアスタイルをチェック。


朝の忙しい時間帯に寝グセを直したりアレンジしたりするのが超絶に煩わしいので、私はここ数年、ずっとワンレンのショートボブという髪型をキープしていて、定期的に縮毛矯正をかけていた。
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