聖夜に降る奇跡
当時の僕は、“ヨウスケ”とゆうハンドルネームで、とあるSNSサイトに登録していた。
そのサイトには、リアルな友達はもちろん、そのサイト内でだけの友達もいて、そこのコミュニティーで、仕事のことや趣味を語り合って楽しんでいた。
そこで、知り合った一人がメイさんだった。
だから、僕達はお互いに顔も声も…名前ですら知らない。
彼女が綴る文字だけが僕の知るメイさんで、
彼女の紡いだ言葉が僕の中の彼女の全てだった。
僕は、彼女と友達になったきっかけなんて覚えていない。
僕達は、それくらい自然に仲良くなって、そして、サイト内にあるメッセージで、個人的にやり取りをするようになっていた。
けれど、僕達は頻繁にメッセージのやり取りをしていたわけではなく、お互いに忙しい日々の合間を縫って、僕達のペースでやり取りをしていた。
初めは、当たり障りのない内容ばかりのものだったが、次第にお互いに自分のことも話すようになっていた。
嬉しい時には、自分のことのように、一緒に喜んでくれて、
悩みを相談すれば親身になって答えが返ってくる。
時には叱られることもあったが、必ずその中には励ましもあって、自分自身を振り返り、ハッとすることや、気づかされることもあった。
僕が辛いとき、悲しい時には、僕自身が表現出来ない自分の気持ちを上手に言葉にしてくれて、“自分は一人ではない”そう思わせてくれた。
彼女が“大丈夫”と言えば、本当に大丈夫な気さえした。
彼女の存在は僕に安心感を与え、日々の疲れを癒してくれる。
だから、甘えていた。
彼女はいつでも、そこに居るのだと…それが当たり前になっていた。