雪だるマフラー
「重視しちゃいけないもの?思うのよね、聖なる夜って愛情が永久に続くんじゃないかって。愛されたことがある人なら誰でも一度は思ったことがあるんじゃないかな。」
「急にどうした?嫁と別れてくれって言いたいのか?」
「そんなこと……思ったことないだろって思っていたなら貴方は私を何にも見ていないことになるけど?」
わかっていた。
私と彼の気持ちが同じ方向に向いていないことぐらい。
信じていた。
彼が発した愛のある言葉を。経験が時に邪魔をしたり慎重になったり、そして今度は本物なんだと期待したり。
「貴方は……私が暖めて欲しい時に暖めてくれないね。」
「………………。」
裏切りをしている私達に希望なんて有るわけないね。未来なんてないね。
サンタさんからプレゼントが届くかもという期待とドキドキしていたあの頃の私は何処にいってしまったんだろうね。
光る指輪が憎らしかった。
傷だらけの時計が嫌いだった。
私は貴方の一部になれないことが苦痛だった。
「……帰って。」
「おい……。」
「クリスマス・イヴに逢えない彼をいつまで愛していればいいのよっ!?」
ごめん、ごめんなさい。本当にごめんなさい。
消えない不安、増える不満、見えない耐え難い切なさ、本当に本当に愛していたから辛かっただけなの。
助けて欲しかったの、暖めて欲しかったの、目に見える愛情を示して欲しかったの。
「来年のクリスマスは、二人で過ごしたい。」
覚えている?
去年初めてキスしたあの日。貴方が私に言ってくれた言葉。
叶う筈がない言葉。