雪だるマフラー
クリスマス・イヴ当日。
皮肉にもシフト的には生徒数が少なく、ただでさえ少ないレッスンに高校生の生徒がキャンセルした。
由美ちゃんの雪ダルマは運良く毎日降り続いた雪と気温の低さに窓際で健在だ。
貰ったハンカチのマフラーもしっかりと巻かれている。
今度は目をそらさず雪ダルマを窓越しで見た。
笑っているように見えた雪ダルマの顔は、泣いているように思えた。
本当だ、これ私だね。由美ちゃん、この雪ダルマ先生にそっくりだよ。
だって目が悲しそうだね、マフラーは凍って暖めてもらっていないんだもん。
皆この雪ダルマを窓越しでチラリと見ただけで直ぐに興味も薄まっていたんだもん。
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すまなかった。
お前を愛していたのは
本当なんだ、信じて欲しい。
欲しがっていた物は買った。
ただ渡せる日は早くて明後日。
待ってくれるか?
それとももう、
間に合わないか?
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欲しかったクリスマスプレゼントはマフラーを
持った、貴方。
クリスマスに会う貴方が欲しかったんだよ。
裏切りを続けていた私が貰えるわけがないクリスマスプレゼント。
来年のクリスマス、その時が無理なら再来年。
クリスマスにマフラーを持って私を暖めてくれる人を雪の降る空の下、待ってみよう。ピアノの鳴る部屋で。
貴方を思い出してしまうだろうけど。
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さようなら、愛してた。
メリークリスマス。
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