雪だるマフラー
キラキラ輝く色とりどりのイルミネーションの光の中、寒い雪空の下を今度は堂々と腕を絡ませ歩いていきたい。
笑われても良いの、一つのマフラーで二人で巻きながら。
だけど今宵は一人。
あの人との思い出が雪の降る数だけ思い出すのは仕方ないことかもしれない。
「もうお父さん~!来るの早いって!」
「舞ちゃんのお父さん?」
「初めまして、舞がお世話になってます。」
「あ、あの……こちらこそ。」
外に出て、肌に凍みる寒さを歩きながら初めて出会った日のことを鮮明に蘇る。
頬に触れた雪の冷たさが、彼が私に触れた指の感触を思い出す。
歩く雪を踏む足音が、自宅の近くで待機している彼との待ち合わせした事を思い出す。
「あ、先生?」
「あら、舞ちゃんのお父さん?」
「先生この辺ですか?俺も会社がこの近くなんです。」
偶然は運命だと言っていた中学生の言葉があの時響いたことはない。
運命とか奇跡とか、そんな安っぽい言葉を信じた私がいたんだ。
「先生……もう少し一緒にいられませんか?」
寒さを堪えても、
涙は堪えられない。
数えきれない甘い言葉も、数えきれない重ね合った激しい夜も、何度想像したかわからない貴方との未来。
降っては溶ける雪のように、貴方に対する全てが消えていく。
涙だけが増えていく。