雪だるマフラー
レッスン中に窓からチラホラ見える街行く人達。雪も降り止むことなく、歩道やお店に設置されたイルミネーションとで益々クリスマスムードに近づいているみたい。
寄り添う恋人達の姿がどことなく嬉しそうに見える。
腕を絡ませ、寒いと身体を寄り添いながら歩く事が出来るのも冬の醍醐味だ。
羨ましくないわけが無い。
私だって彼と堂々と表に出たい。だけど自ら選んだのだから。こうなる想いも寂しさも、予想していたことなんだから。
「先生~やっぱり雪ダルマ寒そうだからこのハンカチ雪ダルマにあげて~。」
レッスンが終わり、教室のドアを開けて母親が申し訳なさそうに頭を下げて入ってくる。
「すいません先生……。由美うるさいので宜しかったら貰ってやって下さい。」
正直私物を預かるのは気が引けるが後でまた返せば良いやと思って、由美ちゃんからハンカチを受け取る。
「先生も気になってたでしょ?」
「え?」
「だって先生もずっと窓見てたもんね?雪ダルマ寒そうだなって見てたもんね?私もね、ずっと気にしてたよ。だからコレあげてね。コレで雪ダルマ寒くないね。」
……目の前にいる既に窓と一体化した雪ダルマより、私はその先の風景を見ていたよ。雪ダルマの存在なんて……見てるようで見ていないフリしていたよ。
「先生ありがとうございました。」
「失礼します。」
雪ダルマなんてどうせいつかは溶けて消えるんだよ、由美ちゃん。
そして私。