Snow mirage
「大丈夫?」
呆然と彼を見つめていた私は、もう一度問われてはっとする。
「ごめんなさい。私は大丈夫。あなたは?」
「僕は平気」
彼は口角をあげて微笑むと、毛並みでも整えるみたいにセーターにすっと掌を撫でつけた。
「それならよかった」
私はそんな彼に社交辞令的に微笑むと、軽く会釈して離れた。
再びコンビニに向かって歩き出したとき、チリンと鈴の鳴る音が聴こえたような気がした。
空耳だろうか。小さく首を傾げた私の腕が、突然後ろからきゅっと掴まれる。
「イルミネーションってどこに行けば見れる?」
ドキリとして身を固くしながら振り返ると、そこにいたのはさっきぶつかった綺麗な男の子で。濃い緑色の瞳で私の顔を覗きこむようにじっと見つめてくる。
「イルミネーション?」
私は日本人離れした彼のことを、警戒心を含んだ目で見返した。