Snow mirage
えらく日本語が流暢だけど、外国からの観光客だろうか。
それにしても、急に公園から飛び出してきてイルミネーションがどうとか。なんだか怪しい。
「クリスマスのイルミネーションを見に来て迷っちゃって」
私が無言で見つめていると、彼が口角をあげて困ったように笑った。
しばらく怪しんで彼を見つめていると、彼がますます困ったように笑う。
その顔が本当に困っているようだったので、私はつい彼への警戒心を緩めた。
「駅前通りのイルミネーションが華やかですよ。今日はクリスマス・イヴだから賑わってると思う」
そう教えてあげると、彼は嬉しそうに笑った。
「ありがとう。君は見に行かないの?」
「行く予定はあったんだけど、なくなったの」
苦く笑いながら首を振る。
すると口元に笑みを浮かべた彼が、私の顔を覗きこむようにして首を傾げた。
「じゃぁ、一緒に見に行かない?」