Snow mirage

返事を待つより先に、彼が私の手を掴む。

警戒を解くのはまだ早すぎただろうか。

掴まれた手を解こうとすると、彼が口を開いた。


「僕、ルイって言うんだ」

ルイ……

その響きに私の身体からすっと力が抜けた。

どうしてまた、同じ名前。

外見は全く違うはずなのに、私を見つめる彼の顔が元カレと重なる。

やっぱり警戒を解くべきじゃなかった。

頭の隅でそんなことを思いながらも、私は彼の手を振りほどくことができず。その手に導かれるままにふらふらと歩き始めていた。


***


駅前はいつもに増して人で溢れ返っていた。

ブティックやインテリア雑貨の店、お洒落なカフェや雰囲気のいいレストラン。

そういった店が連なる駅前のメイン通りには歩道に沿って街路樹が等間隔に植えられていて、そこにブルーやシルバーのライトが飾り付けられている。

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