Snow mirage
それなのに私ときたら、デニムに素っ気ない無地のニット。それにベージュのコートを羽織っただけ。
そもそもコンビニに行くだけのつもりだったから、彼の隣はもちろん、恋人だらけのイルミネーション通りにも似つかわしくない。
もう少しマシな格好をしていればよかった。
近くのブティックのショーウィンドウを見やりながらそう思っていると、不意に冷たいものが額に触れた。
「雪」
ルイの呟く声で、額に触れたものの正体に気付く。
空から降る雪とイルミネーションを見上げて肩を震わせる彼は、とても寒そうだった。
「ちょっと待ってて」
私はふと思い立つと、彼にそういい置いて、近くのブティックに飛び込んだ。
そこであるものを買うと、すぐ使えるよう値札を切ってもらって彼の元に戻る。
突然離れて行く私を不安げに見送っていた彼は、私が戻ると嬉しそうに笑った。