Snow mirage
その反応に少し傷ついた私は、対抗するように彼の頬に掌をあてた。
それから指の背で彼の輪郭を辿るように頬を撫で、唇に触れる。
そうして吸い寄せられるように、私はそこに唇を重ねた。
何度か唇を吸い上げて離すと、彼が驚いたように目を瞠る。
「こういうのは予定外?」
強がって意地悪く笑うと、彼が困って眉を寄せる。
「今日は大丈夫なら、今日のきみだけ私にちょうだい?」
だって、ケーキ食べたでしょ。
冗談っぽく付け加えて笑う私は、ただ淋しかったのだと思う。
振られたイヴの日に出会った、元カレと同じ名前の男の子。
彼に温もりを分けてもらった気がしたのに、それが今にも消えてしまいそうだから。
必死だけれど、それが表に出ないようにルイのセーターを軽く引っ張る。
彼は困ったように笑って私の髪を撫でると、私を抱きかかえてベッドの上に横たわらせた。
それから体重がかからないように私に覆い重なると、両手で私の頬を包んでキスをする。