Snow mirage


帰ろう。それ以外ない。

きらきらした装飾と幸せそうな人達の顔。そんなものばかりに溢れたクリスマス・イヴの街に、今の私はこれ以上ないくらい不釣り合いだ。

苦笑いを浮かべながらコンビニのゴミ箱に背を向ける。

そんな私の耳に「ミー」と、今にも消えてしまいそうなか細い声が届いた。

不意に聞こえてきた声に辺りを見回す。

さらに地面に視線を走らせると、今パンフレットの束を捨てたばかりのゴミ箱の影から小さな猫が震えながら姿を現した。

青みがかったグレイの毛色をしたその猫は、まん丸とした綺麗な濃い緑色の瞳で私を見上げると不安げに小さく鳴いた。

短い、けれど毛並みの綺麗な猫だ。

金の鈴がついた首輪をつけているところを見ると、ノラじゃなくて飼い猫らしい。

だが、そばに飼い主らしき人はいない。

もしかして……



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