Snow mirage


「少し温めるだけだよ?」

顔をあげた彼が頭を傾けたとき、その首元でカチャリと金属音がした。

グレイのセーターの首元から、金色のネックレスに通された銀の指輪がちらりと見える。

その存在にズキリと胸が痛むのを感じながらも、気づかないふりをする。

目を閉じるとすぐに、額に頬に唇に、ルイのキスが落ちてきた。

彼の唇が少しずつ下にさがり、首筋を舌が這う。

彼が動く度に、首元のネックレスが小さな金属音を立てて私の心を揺さぶる。

けれど、私に触れるルイの行為はどこか飼い主にじゃれつく仔猫みたいで。くすぐったくてときどき笑ったりしているうちに、いつしかその金属音は私の耳に届かなくなっていた。

最後に私に深いキスをして、ルイが私を抱きしめる。

身体の奥が熱くなるのを感じて彼に身を委ねた私の耳に、チリンと鈴の鳴る音が聴こえたような気がした。



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