Snow mirage



目を覚ました私は、昨日の夜の服装のままひとりでベッドに横たわっていた。


「ルイ」

数分ぼんやりした後に、すぐその存在を思い出して飛び上がる。

けれど彼が寝ていたはずの場所にその温もりはなく、部屋のどこにも彼の姿は見つけられなかった。

本当に、「今日」だけだったんだ。

テーブルの上には、まだ片付けられていないケーキの皿とシャンパングラスがふたつずつ。

「今日は」という限定されたその言葉の通り、彼は私の前から姿を消した。

泣きそうになりながら枕に顔を伏せたとき、頬に温かいものが触れて顔をあげる。

見るとそこには、昨日ルイに巻いてあげたマフラーが置かれていた。


これも置いて行ったんだ。

昨日の思い出は全てなかったことにしよう。そういうことなんだろう。

今度こそ本当に涙が込み上げてきて、ルイの瞳と同じ濃い緑色のマフラーを掴み上げる。

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