Snow mirage
これくらいは持って行ってくれたっていいのに、ひどいじゃないか。
腹いせに投げつけてやろうとしたとき、マフラーの間から何かが落ちて床の上を転がった。
ベッドから降りて拾い上げたそれは、小さな四角い金属だった。
金色に光るそれにどこか見覚えがあるような気がして、じっと目を凝らす。
よく見るとそこには細い字でアルファベットが掘られていて。読み取れたその文字にはっとした。
「ルイ、まさか」
私はその四角い金属とマフラーを握り締めると、コートも羽織らずに玄関を飛び出した。
自宅のマンションを出ると、地面には薄っすらと雪が積もっていた。
寒さに震えながら辺りを見渡していると、マンションから公園へと向かう道にまだ真新しい足跡が残されていることに気がついた。
大きさ的に、男物の靴の跡だと思う。
これがルイのものなら、まだ近くにいるかもしれない。