Snow mirage

「イヴにひとりぼっちなんて淋しいね」

慰めるように呟いて猫の背を撫でる。

そのとき、首輪に鈴と一緒に小さな金の名札が付けられていることに気がついた。

よく見るとそこには細い字で「LUI」と彫られている。


「ルイ……」

その名前に動揺した私は、猫の背を撫でる手を止めた。


「きみの名前、ルイなの?」

応えるようにか、それとも撫でる手を止めたことへの催促か。猫が私を見上げて細く鳴く。

イヴの日に拾った猫の名前がルイだとは。

なんて皮肉な巡り合わせなんだろう。

数時間前、寒空の下待ちぼうけを食らわせた挙句に電話一本で私に別れを告げた彼氏の名前が「ルイ」だった。

否、もう元カレになるのか。


「食事したあとイルミネーション見て、うちでケーキ食べようって約束してたの。もう一ヶ月も前から。それなのに…イヴを一緒に過ごしたい人が他にできたんだって」

まだ新しい心の傷を苦笑いで誤魔化しながら、愚痴にも似た言葉を溢す。


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