Snow mirage
女の子と猫をぼんやり見つめていると、猫が私を気にかけるように彼女の腕の中で振り返る。
それに気づいた彼女は猫を抱いて立ち上がると、私に小さく会釈した。
それから大事そうに猫を抱きしめて公園を去って行く。
行っちゃった……
彼女達が去ってから、私は猫の首輪に通した指輪のことを思い出した。
きっと自分では捨てられなかった。
未練を断ち切るように首を振る。
そのとき、横殴りに吹いてきた風が私に凍えるほどの冷気を運んできた。
早く帰ろう。
両腕で身体を抱きしめて身震いしたとき、ふと額に何かが触れる。
視線をあげると、とても細かな、目を凝らさないと気づかないほどの小さな雪が空から落ち始めていた。
寒いわけだ。
私は空に向かって白い息を吐くと、公園をあとにした。