Snow mirage


夕方。空腹で冷蔵庫を開けた私は、その真ん中を堂々と陣取っているそれにため息をついた。

もみの木や金の鈴、笑顔のサンタの砂糖菓子。やけに浮かれた装飾に加え、極めつけは「メリークリスマス」の文字入りのチョコのプレート。

そのケーキを作ったのは紛れもなく私自身なのに、そのあまりの浮かれ具合に吐き気がした。

食べる気は勿論、それを手に取る気にすらなれず、無言で冷蔵庫の扉を閉める。

私は手近にあったコートを羽織ると、適当なバッグに財布だけ突っ込んで家を出た。

コンビニでお弁当でも買おう。

クリスマスなんて微塵も感じさせない、いつでも売ってる普通のお弁当。

昼間ちらついていた雪は、今はやんでいた。

けれど寒いことに変わりはない。

コートのポケットに両手を突っ込んで昼間猫と別れた公園を早足で行き過ぎようとしていると、その出入り口から突然何かが飛び出してきた。


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