Snow mirage
風を切って飛び出してきた何かを避けようと、慌てて立ち止まる。
けれどうまく避けきれず、それは私の肩に思いきりぶつかった。
「大丈夫?」
ぶつかってきた誰かに声をかけられ、よろけながらも何とか持ち堪える。
顔をあげてその相手を見たとき、私は一瞬瞬きも呼吸も忘れた。
目の前に立つその人が、日本人離れしたとても綺麗な男の子だったからだ。
もしかしたら20歳を超えてるかもしれないから「男の子」という表現は違うのかもしれない。
でも、背が高いわりに華奢な見た目や少しつりあがった真ん丸な目は彼を幼く見せていて。「男の人」よりも「男の子」という表現が似合う気がした。
心配そうに小首を傾げる彼の瞳は濃い緑で。それは彼の青みがかったグレイの髪の色によく映える。
空気はかなり冷たく寒いのに、彼は髪の色と同じグレイのざっくりとしたセーターを着ているだけで、上着も持っていなければマフラーもしていなかった。