神様町一丁目一番地【短編】
夜、パパが帰ってきて、
カブ、死んじゃったのよって
ママが話していた。




僕は信じられなかった。
どうしても
カブが死んだことを信じたくなかった。




パパはカブトムシが
10月の終わりまで生きているなんて
珍しいんだぞって
冬を越すカブトムシなんてそうは
いないんだぞって
言うけれど、
僕はそんなことはどうでも良かった。




だってさ、
動かなくなったカブを見ても、
生きているような気がして
仕方なかったから。




まるで、服を脱いだみたいに
カブの魂だけがどこかに
行ったみたいな気がしていた。




次の日の土曜日。
僕とパパは家の前の公園に行って、
カブを桜の木の下に埋めてやった。
ゼリーと寝床にしていたおがくずも
少し入れてやったんだ。




そして、
カブとお別れをしたんだ。




カブ、ありがとうって。







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