兄弟的同性愛事情
*兄と俺



生暖かい風にのって、春っぽい匂いがカーテンを退かして窓から部屋へ入ってくる。


黒く軽い俺の毛は、その軽い風に揺らいで


ぴょんっと跳ねたままの寝癖の存在を俺にまた意識させた。


逸巳 李桜(はやみりお)


あまり聞かないような名字とは反対に、あまりにも普通すぎる外見。


一応、こんな名前でも男。


昔から、この容姿と名前のせいで俺は苦労してばかりだ。


ハンガーに掛かっているブレザーをはおり、襟にネクタイを通す。


…あれ?


ネクタイって…どーやるの?


「このやろっ…」


無理やり結んだネクタイは、有り得ないような状態になってしまった。


…くっそー…


結んだはいいけど、ほどけない。


どーすんだよ…これ…


コンコン


ドアを叩く音がして鏡越しに後ろを見ると、


笑いながら開いたドアにもたれ掛かってる兄ちゃんがいた。


「おはよ。朝からなにやってんだよ、李桜」


そう言って近づいてきた兄ちゃんの首には、綺麗に結ばれたネクタイが掛かっていた。


…俺のとは大違い。


「李桜、こっち向いて」


兄ちゃんと向かい合うと、ネクタイに伸びてきた手はいとも簡単にあべこべに結ばれたそれをといて


一瞬で綺麗に結んでみせた。


「なんで兄ちゃんはできんだよ…」


「できないのは、李桜がガキだからだよ♪」


「ガキじゃねー!!」


逸巳 李堵(はやみりと)


俺と1つ違いの兄ちゃん。


俺より少し明るい髪色で、頭が良くて運動もできる完璧人間。


唯一できないのは、料理くらいかな。




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