兄弟的同性愛事情
「てっきり、もう突っ込まれてるのかと思ってた」
「はぁ?!?……なにを?」
突っ込まれてる?
なに、それ?
首を傾げる俺に、同じく首を傾げるもも。
目を合わせたまましばらくの沈黙が続く。
いつもの、屋上へ続く階段の上。
今日は放課後に何かあるらしく、生徒がいつもより忙しく動いている気がする。
誰にも聞かれずに話すなら、やっぱりここだなぁって思いながら、階段に座って伸びをした。
「で、突っ込むってなにを?」
思い出したように言うと
「純粋なのね。ま、いーや!」
と、素っ気ない返事で終わらされた。
「なんだよそれっ!」
「よしよし。チェリーボーイにはまだまだ早いお話よ♪」
宥めるように撫でてくるももの手に、少しイラつきを覚える。
(たまに、ももの言うことわからないんだよな~…)
深く突っ込まれて話していくと、ついていけない話題になってしまう。
腐女子って、なんか…いろいろすごいんだなぁ…。
あれっ、感心するところ…かな?
ももがポケットからキャラメルを出して、口に放り込む。
「李堵さん、そんなにヤキモチ妬きだったんだね~」
白いキャラメルを俺に投げつけて、ももは困ったように笑った。
飛んできたキャラメルの袋には、『ホワイトキャラメル~甘酒~』と書いてあった。
美味しいのか?これ…
食べる勇気がなくて、とりあえずブレザーのポケットに突っ込んでおいた。
「美味し~!」とか呑気に言ってるももは、階段の手すりに座って足をブラブラ揺らしていた。
ふぅ…と一息ついて、ももは手すりから飛んで俺の目の前に降りた。
無駄な運動神経の良さ…。
「これは大変だなぁ、李桜」
「他人事のように言うな!もものせいでもあるんだからな?!」
「なんで私?!?李桜が李堵さんにわざとヤキモチ妬かせてるようなものでしょ!」
「そんなことしてないっ!!」
誰が好きで兄ちゃんの機嫌を損ねるようなことするかってーのっ!!!
「…怖いんだから。怒った兄ちゃん」
正直言うと…かなり怖かった。
なんか、いつもの兄ちゃんじゃなくて。
無理強いなんてされたことなかったし、される相手が兄ちゃんだなんて思ってなかった。
情けないし、兄ちゃんに申し訳ない…。
「俺がガキすぎるのかな?」
「ビックリしちゃっただけなんでしょ?嫌ってわけでもなかったんでしょ?」
コクコクと頷いて、撫でてくれるももの手に落ち着いて目を閉じる。