兄弟的同性愛事情




「てっきり、もう突っ込まれてるのかと思ってた」


「はぁ?!?……なにを?」


突っ込まれてる?


なに、それ?


首を傾げる俺に、同じく首を傾げるもも。


目を合わせたまましばらくの沈黙が続く。


いつもの、屋上へ続く階段の上。


今日は放課後に何かあるらしく、生徒がいつもより忙しく動いている気がする。


誰にも聞かれずに話すなら、やっぱりここだなぁって思いながら、階段に座って伸びをした。


「で、突っ込むってなにを?」


思い出したように言うと


「純粋なのね。ま、いーや!」


と、素っ気ない返事で終わらされた。


「なんだよそれっ!」


「よしよし。チェリーボーイにはまだまだ早いお話よ♪」


宥めるように撫でてくるももの手に、少しイラつきを覚える。


(たまに、ももの言うことわからないんだよな~…)


深く突っ込まれて話していくと、ついていけない話題になってしまう。


腐女子って、なんか…いろいろすごいんだなぁ…。


あれっ、感心するところ…かな?


ももがポケットからキャラメルを出して、口に放り込む。


「李堵さん、そんなにヤキモチ妬きだったんだね~」


白いキャラメルを俺に投げつけて、ももは困ったように笑った。


飛んできたキャラメルの袋には、『ホワイトキャラメル~甘酒~』と書いてあった。


美味しいのか?これ…


食べる勇気がなくて、とりあえずブレザーのポケットに突っ込んでおいた。


「美味し~!」とか呑気に言ってるももは、階段の手すりに座って足をブラブラ揺らしていた。


ふぅ…と一息ついて、ももは手すりから飛んで俺の目の前に降りた。


無駄な運動神経の良さ…。


「これは大変だなぁ、李桜」


「他人事のように言うな!もものせいでもあるんだからな?!」


「なんで私?!?李桜が李堵さんにわざとヤキモチ妬かせてるようなものでしょ!」


「そんなことしてないっ!!」


誰が好きで兄ちゃんの機嫌を損ねるようなことするかってーのっ!!!


「…怖いんだから。怒った兄ちゃん」


正直言うと…かなり怖かった。


なんか、いつもの兄ちゃんじゃなくて。


無理強いなんてされたことなかったし、される相手が兄ちゃんだなんて思ってなかった。


情けないし、兄ちゃんに申し訳ない…。


「俺がガキすぎるのかな?」


「ビックリしちゃっただけなんでしょ?嫌ってわけでもなかったんでしょ?」


コクコクと頷いて、撫でてくれるももの手に落ち着いて目を閉じる。




< 100 / 126 >

この作品をシェア

pagetop