兄弟的同性愛事情
家の電気がついていて俺はとても驚いた。
いつもなら、俺が先に帰るのに…
それに、早く終わったら俺のこと迎えに来てくれる約束になってるのに…。
なんで?
疑問に思いつつ、嬉しくて俺はアパートの階段をかけ上がった。
ドアを開けると、兄ちゃんが部屋着になった状態で立っていた。
「おかえり、李桜」
「たっ、ただいま!」
なんだろう。いつもと逆だからかな?
おかえりって兄ちゃんに言われただけで心臓が跳ねた。
「玄関に立ってないで部屋に入りなよ」
「うんっ」
夕食の麻婆豆腐を食べ終わって食器を片付けると
洗濯物を畳終わった兄ちゃんが俺を手招きした。
小走りで駆け寄ると、ソファーに座った兄ちゃんの隣に座らされた。
「なぁ、兄ちゃん。なんで今日は先に帰ったの?別にいいんだけどさ」
「邪魔しちゃ悪いと思ってさ」
邪魔…?
「李桜、正直に答えて。李桜が本当に好きなのは…誰?」
え?
(どーゆうこと?)
俺が本当に好きな人。
そんなの、聞かなくてもわかってるだろ?
今さらなに聞いてくるのかと思ったら、答えが決まってる質問?
心の中で兄ちゃんのことバカにした。
わかりきってるだろ?って、言わなくても伝わってると思って。
だから、
「俺じゃないよね?李桜の好きな人は」
冷たい目で、兄ちゃんからそう言われるなんて思ってなかったんだ。
「なに、言ってるの…?」
なんでそんな顔して聞いてくるんだよ…。
泣きそうに笑いながら、兄ちゃんが言葉を続ける。
「俺じゃないだろ?」
声が震える。
「俺が好きなのは兄ちゃんだよ?!…なんでそんなこと言うんだよ…?」
わかんねぇよ。
兄ちゃんは俺が好きで
俺は兄ちゃんが好きで
それが当たり前で、違うわけないって信じてた。
「好きだよっ…兄ちゃん」
初めて俺からしたキスは、兄ちゃんの唇の左端に触れただけ。
抱きついても、抱き締め返してくれる腕はない。
信じてもらえてない。
疑われるような、そんな中途半端な気持ちに思われてるんだろうか。
「好き。俺は兄ちゃんだけが好きだよ」
すがりつくように抱きつくことしかできない。
涙が兄ちゃんの服を濡らしていく。
吸い込まれて、消えていく。
それでもまだ溢れてくる。
呪文のように言い続ける俺の声は、兄ちゃんにはひとつも届いていないようだった。
「…じゃあ、確かめていい?」
「えっ」
「俺だけの李桜だっていう、証がほしい」
ヤキモチですれ違っていく俺たちの心は、どんどんずれて
…いつからだっけ?
こんな風になったのって。