兄弟的同性愛事情
~李堵side~
「はぁ~スッキリした!」
俺の腕からパッと離れて、俺に満面の笑みを見せる。
風で髪の毛がふんわりと揺れる。
この容姿、それはまるで天使。
男のくせに、まるで人間とは思えないほどの美少年。
ハルヒ…浅河 ハルヒと俺は、別に特別仲が良い訳ではない。
いや、良くなかった、か。
ある理由から、俺達は関わりを持つようになった。
…李桜を傷つけてしまったあの日から、俺はどこかおかしかった。
◇◆◇◆◇
《4日前》
俺は李桜を傷つけてしまったあの日から
頭の中で、俺が体を動かす度に聞こえる李桜の声が響いていて、気が狂いそうだった。
李桜といるのが辛くて
また襲ってしまうんじゃないか
そう思う度に、自分のことが怖くて汚く思えて仕方なかった。
部屋にいるのさえ辛くて、家の近くの公園についたとき
「あれ?…こんばんは」
公園のベンチに座っていたのが、ハルヒだった。
月光を浴びて光る髪が綺麗で、綺麗な髪から遠慮がちに見えるオッドアイに吸い込まれそうになった。
「座れば?隣おいでよ」
ハルヒは制服のままだった。
だからすぐに同じ高校の奴だとわかって、それが噂の美少年だと話しているうちにわかった。
「俺は李堵のことよく知ってるよ」
「目立ってるからな」
「自覚あるんだ!?」
「生徒会もやってれば目立つに決まってるだろ」
たわいもない会話も、初対面の奴とは思えないくらいはずんだ。
「そーいえば、なんでお前こんな時間にこんな所にいるんだ?」
ハルヒは俺の家の近所には住んでいない。
2駅向こうの所に住んでいると言っていた。
それが、こんな時間になんで公園?
「俺、一人なんだよね。家に帰っても寂しいから、公園で遊ぼうと思ったの。李堵は……家に居ずらくて来たとか?」
「…まぁ」
「ふーん」
ハルヒは深く聞いてこなかった。
俺も深く聞かなかった。
たぶん、お互いそのときはなんとなく
なんでもいいから、誰かに傍に居てほしかったんだ。
「李堵、俺の家くる?」
居ずらかった家から連れ出してくれたハルヒの手を、俺は無意識のうちに取っていた。
(朝になったら帰ればいい)
そう考えながら、俺はハルヒと駅へ向かった。
終電に乗ってついた先は、立ち寄ったことがない町だった。
その町の空気をすって安堵した。
李桜がいない町。
肩に背負っていた重荷がいっきになくなったような解放感があった。
なにも考えず、ハルヒの家に入って
気づいたときには、ハルヒにベットへ押し倒されていた。
「李堵、お願い。安心させて?…俺に李堵の体温ちょーだい?」
「なに、抱いてほしいの?」
「うん。お願い。して?」
冷静に考えれば、おかしすぎる。
初対面の奴と、いきなりベットでヤる。
しかも、相手は男。
「はぁッ、ぁぁあ!!李堵ッ、李堵ッ、もっと…」
喘ぐハルヒを見ながら、無心で体を動かす。
俺の頬は、また、濡れていた。
◇◆◇◆◇
この日から、ハルヒは教室が遠い俺に毎日来るようになった。
犬みいで可愛いところが李桜みたいで、来られるのが嫌じゃない。
それに、拒絶したらハルヒはたぶん、消えてしまう。
そんな気がして、放っておけない。
離れるときに見せる悲しそうな瞳を見て、俺はずっとそう考えている。
だからといって、李桜より大切な奴ってわけじゃない。
でも、
「李堵ー?」
俺はきっと、まだしばらくハルヒの傍から離れないだろう。
「教室に帰るか、ハルヒ」
李桜に触れられなくて募っていく寂しさや悲しみを埋めるために
俺はハルヒを利用する。
(最低だな…)
でも、これでいいと思っていた。
こうすれば、誰も傷つかず
俺も誰も傷つけずに済む。
そう思うから…。