兄弟的同性愛事情
「…あぁ。とりあえずは大丈夫だと思う。……うん。………んー…」
暖かい…。
怠い体を動かして自分の回りを見ると、懐かしい部屋の中に俺はいた。
ベットで寝ている自分の横で、秀兄ちゃんが誰かと通話している。
少しずつはっきりとしてきた頭には、相変わらず鈍い痛みあった。
でも気分はそんなに悪くない。
廊下で倒れてから、秀兄ちゃんがここまで運んできてくれて寝かせてくれたのだろう。
あのとき秀兄ちゃんが俺のこと受け止めてくれなかったら、俺…絶対頭廊下にぶつけてた。
「わかってる。……あぁ…うん、じゃあな」
通話が終わったようで、ケータイを机の上に置いて俺の方を見て秀兄ちゃんは笑った。
「起きてたなら声かけろよな~」
「ん、さっき起きた…」
安心したように一息ついて、ペットボトルに入っているお茶を俺に差し出した。
お茶はペットボトルの半分くらいしか入っていない。
思わず笑ってしまった。
明らかに飲みかけの物を渡すか?普通。
「飲み物、今これか水道水しかないんだ!」
「じゃあ水道水飲む」
「うわ、軽く傷つく~」
全く傷ついていないくせによく言うよ。
と思いながらも、こんなやり取りが久しぶりで嬉しい。
別に何があったって訳でもないんだけど、秀兄ちゃんは兄ちゃんの友達だし、俺との間には何か特別な関係があるわけでもないから、兄ちゃんと疎遠になると接点が無くなるのだ。
それなのに、秀兄ちゃんは俺のところに会いに来てくれた。
人混みが苦手なはずなのに、一番人が集まる時間帯の一番人が集まる場所に。
なんだかんだ言うけど、結局は優しいところとか兄ちゃんみたい。
そう思って、キッチンに立っているであろう秀兄ちゃんの方を見た。
この家にはいろいろな思い出がある。
小さい頃、何度か来た秀兄ちゃんの部屋。
いなれているわけでもないのに、すごく安心する。
「李桜、ほら」
起き上がって秀兄ちゃんからコップを受け取る。
透明なコップの中に入っていたのは
「紅茶…」
「温かい物の方がいいかもしれないだろ?体に」
ストレートティーは秀兄ちゃんの母親が好きで俺たちにもよく飲ませてくれたから俺も好き。
まぁ、昔は砂糖いれないと飲めなかったんだけど、兄ちゃんと秀兄ちゃんの真似をして入れないで飲んでいたら、加糖のものが飲めなくなった。
常温で飲みやすかったから、一気に半分も飲んだ。
「少しは気分良くなった?」
「うん」
気づいたら頭痛も無くなっていた。
俺の様子を見て少し微笑んだあと、秀兄ちゃんは俺を真剣な顔で見てきた。
少し怒っているような顔。
紅茶を飲むのをやめて、俺は秀兄ちゃんの言葉を待った。