兄弟的同性愛事情
約束の日は曇っていて、朝の目覚めも悪かった。
ほとんど眠れなかった。
遠足に出かける前日の小学生のようにワクワクして眠れなかったわけではない。
ただ、李桜の声が耳から離れなくなって、李桜の姿が瞼の裏に焼き付けられていて
眠ろうとして瞼を閉じる度に、お互い距離を置くようになったあの日の李桜との出来事が何度も何度も繰り返された。
久しぶりに話したせいにして用意しておいた服に手を通す。
終わったことだ。
未練がましい自分が自分でも嫌になる。
ハルヒとヤる時も、何度も李桜と重ねて見ていた。
何年も想い続けたんだ。未練がましくもなる。
「桜公園、だっけ」
ハルヒの家から公園までは少し時間がかかるけど、今からならハルヒが目を覚ますまでに帰ってこられる。
夢は願望を映し出すともよく聞くが、もしそれが本当なら、俺は李桜に会いに行くべきではないだろう。
電源を切ったままのケータイを握り締める。
待ち合わせの時間は言われなかった。
きっと、場所と日にちを言うだけでも精一杯だったんだろう。
ベットに座ってハルヒの髪を撫でる。
その時、俺の手を冷たい手が握り締めた。
「公園じゃなくて、映画だよ?李堵」
息が止まる。
全てを見透かすような瞳が俺を責めているように見えた。
ただ見つめられているだけなのにそう感じるのは、俺が不純だからだろうか。
掛け布団からスルリと抜け出したハルヒは、俺の紺色のTシャツを着ている。
日に照らされた真っ白な肌とシーツからTシャツの色だけがハッキリと目に映る。
いつの間に着たんだろう。
「寒かったから借りちゃった。やっぱり大きいね」
照れ笑いしているハルヒにつられて俺も笑う。
…そうだ。
俺が大切にすべき人はすぐ目の前にいる。
過去に対する罪悪感から側にいることにしたが、ハルヒに対する感情を恋情に変えられないことはない。
叶わない恋、叶えてはいけない恋にしがみついているのは馬鹿だ。
ハルヒとなら、心の傷が埋まる気がしている。
「何時に出かける?少し買い物もするか?」
「じゃあ、本屋さん行きたい!欲しい本があるんだ〜」
「うん、いいよ」
出掛ければ、頭の中にある公園という文字は掻き消されるだろうと思った。