兄弟的同性愛事情
足が縺れて転びそうになったハルヒの腕を引いて抱きとめる。
ずぶ濡れになった俺達の体には服がへばりついていた。
すごく苦しくて咳込む。
走りすぎて呼吸が上手くできなくなっていた。
ハルヒの身体は熱いがどこか冷たくて、ここにいるのがハルヒだと思えない。
夢の中のように思えた。
雷の音さえ遠く聞こえる。
「ぁ…李堵、僕…」
「大丈夫か?」
「…ん」
すぐ近くから聞こえた落雷の音で目が覚めるような感覚がした。
薄暗い道を雷が照らし出す。
李桜と登下校に使っていた道に座り込んでいることに気づいて、立ち上がって雷が落ちた方向を見る。
公園は落雷があった方向にある。
「行かなくていいの?」
水溜りの中に座り込んだハルヒが俺を見上げて声をかける。
ハルヒは笑っていた。
「迎えに行かないと、だよね?僕もついていかせて?」
立ち上がって俺の背中に抱きつく。
あれほど気にならなかったはずの雨が全身に痛いほど降り注ぐ。
「ほらっ」
トンッ、と背中を押した力は弱く、一歩足を踏み出しただけだった。
その一歩の重みを俺は理解する前に走り出していた。