兄弟的同性愛事情
「なんかわかんないけど…寂しいならいつでもくっついていーんだよ?」
散々ハグばっかしてきて、そんなことまで言い始める。
もう、俺はいたたまれなくなって…
「ばっかじゃねーの!?」
せっかくの兄ちゃんからのハグを拒否した。
兄ちゃんは困ったように笑って、俺より先を歩き始めた。
…自分でやったくせに、なんで拒否したんだろって後悔。
寂しくなんてないけど
違うけど…
なんなんだよ、この気持ち。
「李堵~、李桜君!おはよー」
あー…もう、最悪。
なんでいつも華恋って…タイミング悪いの。
狙ってやってるだろ?
ほら、
兄ちゃんは華恋の隣へ行ってしまった。
こんな気持ちなのに、華恋と仲良くできるわけないだろ。
「李桜君…」
話すのも嫌だ。
お前の声なんて、二度と聞きたくないって気分なのに。
「おい、李桜っ」
兄ちゃんは華恋を無視した俺にたぶん怒ったんだ。
通りすぎようとした俺の肩を掴んで、無理矢理引き留めた。
「触るなッ!!!」
パシンッ
乾いた音を立てて、俺から兄ちゃんの手が離れた。
叩いたのが自分だと気づいたのは、数秒後。
…あ…
なにやってんの、俺…。
周りからすごい視線を感じる。
顔が上げられない。
兄ちゃんの顔が見れない。
…俺、どんな顔させてんの?
「李桜っ」
兄ちゃんの声を無視して、俺は全力でその場から逃げた。