兄弟的同性愛事情
その笑顔に跳ねる心臓。
手を引かれて潜った門の先には、満開の桜と新しい世界があった。
「にいちゃ…」
俺が呼びかけたとき、
「李堵っ!」
俺の大嫌いな声が、兄ちゃんを呼んだ。
「華恋(かれん)!」
佐久間 華恋(さくまかれん)。
…兄ちゃんの、恋人。
生徒会で副会長をやっている。
美人で有名で、モデルをやり始めたとか、聞いたことがある気がする。
俺がこの世で一番嫌いな人間。
コイツがいると、俺は
イライラして、胸が苦しくて仕方なくなる。
「李桜くん、おはよう」
笑顔で挨拶してこられるのも、嫌で仕方ない。
アイツの顔なんて、見たくない。
…アイツを見る兄ちゃんの顔なんて、見たくない。
俺は逃げるように生徒玄関へ早足で歩く。
「おいっ、李桜!!」
こうすれば、兄ちゃんが追ってくるって知ってるから。
…困らせるのを知ってて、俺はいつもこうする。
「李桜、クラス別け見るか」
兄ちゃんの笑顔は、俺だけのもの。
ここは、俺だけの場所。
…そんなの、有り得ないのに。
「2組って、俺と一緒じゃん!」
さりげなく兄ちゃんのブラウスを掴んでた手は、バレそうになったから離した。