兄弟的同性愛事情
「李堵、怒んなよ~」
「秀都は黙ってろ」
秀兄ちゃんが宥めようとしても聞く耳を持たないのは、こういうときはいつものこと。
真田 秀都(さなだしゅうと)。
秀兄ちゃんは兄ちゃんの幼馴染みで、昔から俺にも優しくしてくれる。
秀兄ちゃんは困ったように肩をすくめると、俺に苦笑いした。
「李桜、また新学期早々鬼ごっこ?」
「やりたくてやってる訳じゃないって!」
お疲れさんっ。
秀兄ちゃんは笑いながら俺の頭を撫でた。
笑えないんだけどな…。
毎年こんなで、俺は慣れてしまったけど迷惑極まりない。
自分が男なのに、軽く男性恐怖症になっちゃってるし…。
「俺の許可なしに、李桜に近づかないでくれる?」
兄ちゃんは、俺に近づいてくる奴等を毎年追っ払ってくれるってわけ。
秀兄ちゃんはそんな兄ちゃんを見ていつも面白そうに笑ってる。
俺はいつも、兄ちゃんの影にこうして隠れてる。
俺一人じゃ手に負えない。
やっぱり、兄ちゃんは頼りになる。
ここにいると、絶対大丈夫って安心できるんだ。
「いきなりなんなんだよ?関係ないだろ!?」
追いかけてきた奴等の中から、苛立った声が飛んでくると
そいつに続いて全員が言い出した。
…兄ちゃん、絶対キレてる。
オーラが真っ黒だ。
「生徒会長として言う。生徒を困らせるようなことをされては、非常に迷惑だ。」
シン…
さっきまで騒いでいた奴等が嘘のように静かになる。
生徒会長ってとこに驚いたのか。
兄ちゃんは、これでもこの高校の生徒会長。
ちなみに、副会長は華恋と一緒に秀兄ちゃんがやっている。
生徒会なんて言われたら、さすがに誰でも歯向かわなくなる。
舌打ちをしながらも、追いかけてきた奴等はぞろぞろと帰っていった。
「ふぅ…」
軽い溜め息をついて、兄ちゃんは俺の頭を優しく撫でた。
「李桜、もう大丈夫だよ」
「ありがと、兄ちゃん」
毎年こんななのに、兄ちゃんは嫌な顔1つしない。
ホントに優しい。