兄弟的同性愛事情
秀兄ちゃんの部屋は、決して綺麗とは言えない。
こーゆー部屋が落ち着くって言ってた。
けど、俺はこんな部屋無理。
絶対無理!!!!!
「こんなんじゃわけわかんないよ!!片付けよう?」
「えぇ~…」
めんどくさいぃい…とか言いつつ、しぶしぶ秀兄ちゃんも片付け始めた。
年間予定表とか、全然関係ないプリントも多数…。
ダメ人間かよ!!!!
こんな副会長なんて、嫌だ…。
なぜか楽しそうに鼻歌を歌いながらプリントを片付けていく秀兄ちゃん。
なんでこんなに上機嫌なの?
不思議に思いながらも、最後のプリントを拾って片付け終わり!
10分かけて拾った紙の束は、15センチくらいの厚さになった。
「後はプリンターに任せよう!」
…この人…
初めからプリントを集めるのが面倒で、俺にやらせるために呼んだんだ…!!
これのどこが重要な仕事だよ!?
雑用係じゃないんだぞ、俺は!!
「李桜、紅茶には砂糖いらないんだよな?」
「え?…あ、うんっ」
「すぐに淹れるから、待ってて」
秀兄ちゃんと俺は喧嘩をしたことがない。
もちろん、今みたいに怒鳴りたくなることもなかったわけじゃない。
けど、いつも秀兄ちゃんは
今みたいにヘラッて笑って、悪びれることなく話しかけてくる。
怒るタイミングがつかめなくて、結局、怒っても怒りを萎めざるおえないと言うか…
怒れないタイプなんだよなぁ…。
本人は無自覚でこーなんだし。
そう考えると、怒れないんだ。
ふんわりと紅茶の香りが部屋に広がっていく。
なんでここにポットがあるのか。
答えは今わかった。
紅茶好きの秀兄ちゃんのことだ。
いつでも飲めるように、常にお湯を入れておくんだろう。
棚を開ければ、ティーパックが大量にある。
準備良すぎ。
秀兄ちゃんはティーパックで容れた紅茶は好きじゃないんだけど、さすがに茶葉まで持ってきたりはしないか。
ここが学校だと忘れるくらい、この部屋は居心地が良かった。
「ん、紅茶」
「ありがと」
カップが2つあるってことは、このカップをいつも使っているのは兄ちゃんだろう。
兄ちゃんはサボリなんてやらないけど、食事とかはここで食べるのかもしれない。
印刷機が忙しく動く音を聞きながら、熱い紅茶を一口口に含む。
この空間に印刷機というのがあまりにも合わなくて、変な感じがする。
「李桜、美味しい?」
「うん。…俺、秀兄ちゃんと紅茶飲むの好きだなぁ」
「なんだよそれ」
少し笑いながら、甘酸っぱい香りの紅茶を秀兄ちゃんはゆっくりと飲んだ。
「なんか、落ち着く…」
ふっと笑った秀兄ちゃんから、林檎の香りがした。
ストレートしか飲まない俺は、正直レモンティーとかが美味しいとは思えない。
自動販売機で売ってる紅茶なんて飲めない。
秀兄ちゃんの淹れてくれる紅茶は、それくらい美味しいんだ。
プリントの交換に印刷機へ向かった秀兄ちゃんのカップの中には、既に紅茶は残っていなかった。
沈黙が多い。
3分おきくらいに一言二言喋るくらい。
ゆっくりと時間の流れを感じられる。
ちょうど眠くなってきたとき、ふと、思い出したように秀兄ちゃんは
「李堵とは上手くいってるの?」
と言った。
ドキッとした。
秀兄ちゃんには、俺は報告していない。
だから、兄ちゃんが言ったんだろうけど
知られてることにとても驚いて
動揺した俺は、音を立ててカップをテーブルに置いた。
「た、たぶん…」
上手くいっている。
そう答えられなかったのは、それがどーゆーことか今一理解できていないからだ。
上手くいっているって、どーゆーことなんだろう?
喧嘩とかはしないから上手くいってるのかな…?
キスだって毎日するし。
…って、俺は何言ってるんだ!?!
いろいろなことを考えて、一人で赤面してしまった。
秀兄ちゃんにバレないように、カップで顔を見えにくくした。