兄弟的同性愛事情
「なんか悔しいな…」
「え?」
呟かれた言葉は印刷機の音で消えた。
弱々しくて、…秀兄ちゃんらしくない声だった気がする。
振り向いてはくれない秀兄ちゃんの背中は、兄ちゃんよりも少し大きく感じた。
窓の向こう側に真っ赤に燃える夕日が見える。
夕日が世界を真っ赤に染めて逆光になって秀兄ちゃんの表情がわからない。
首を傾げる。
秀兄ちゃん、…どうしたんだ?
俺の隣に秀兄ちゃんは座って、じっと俺を見つめてきた。
「俺はずっと、…李堵なんかよりもずっと……」
「秀兄ちゃん…?」
近づいてくる秀兄ちゃんから逃げようと座る位置を右へずらしていく。
やがてソファーの端まで追いやられて、俺は止まった。
「…好きだ」
「は…?っ?!」
唐突に告げられた想いに驚く間もなく、俺の顔に秀兄ちゃんの影が落ちた。
強引に触れてきた秀兄ちゃんの唇は
氷のように冷たく
俺の唇の温度で溶けてしまいそうなほど、儚いものだった。
「なんで…?」
俺は、秀兄ちゃんの顔を見ることができなかった。