兄弟的同性愛事情
「…帰る」
荷物を持って、俺は部屋からでた。
追いかけて来られてるわけではない。
でも、なぜかわからないけど
俺は廊下を走って下駄箱まで階段をかけ下りた。
印刷機の音で消されていた心臓の音は酷く五月蝿くて
すごく、耳障りだった。
生暖かい唇に触れるのは、秀兄ちゃんの唇と同じくらい冷たい自分の指。
なんの違和感もなかった。
あまりにも自然に起きたことで
そうなることが当然のようだった。
…なに考えてるの、俺。
相手は、兄ちゃんじゃないよ…?
浮かんだ疑問と違和感を感じたくなくて、俺はまた走り出した。
「上手くやっとけよ、華恋」
今日の風は、向かい風。
まるで、俺を家へ近づけないように吹いているようだった。