兄弟的同性愛事情
部屋にお風呂までついてるなんて、ホントに凄すぎる。
お風呂場もすごく綺麗。
タオルで髪を拭きながら、ベットに座る。
コンコンッ
「もも?」
「うん。入って大丈夫?」
「うん」
ドライヤーで髪を乾かし終わったももは、いつも少しふんわりとなっている髪がストレートになっていて新鮮な感じがした。
フリルで飾られた真っ白な服は…
「ももらしくない感じだね」
似合ってるけど、ももはシンプルな服が似合う。
それに、ももにフリルってイメージがなかった。
ももは恥ずかしそうに髪を手で弄る。
サバサバしてるくせに、急に女の子っぽくなるんだよな~。
たまに、ももが妹みたいに思えるときがある。
「似合わないでしょ…?」
「ううん。可愛いよ」
ももの頭を撫でながら言うと、ももは顔を真っ赤にした。
「ば、ばっかじゃないの!!///」
照れすぎ。
これだもん。学年の男子が夢中になるのも頷ける。
誉められなれていないのか、ももは誉められるとすぐ赤くなる。
なんで俺としか話そうとしないのかな?
勿体ない。
逆に、なんで俺なんだろう?
ずっと不思議に思っていたんだ。
ももが周りの人間を拒絶する理由がなんなのか。
「なに?じっと見てきたりして…」
誰にでも抱えているものはある。
誰にも触れさせない、弱い部分が。
「俺にも、ももを守らせてね?」
自分のことさえ一人でどうにかできない奴が何を言い出すのだろう。
なんとも頼りない。
それなのに、ももは俺の手を優しく掴んで
「ありがとう」
と言って、微笑んでくれた。
微笑み返した俺を見るももの瞳は、すごく悲しそうに見えた。
「も…」
ブー…ブー…ブー…
ももを呼ぼうとすると、机の上から物音が聞こえた。
バイブ音…?
ケータイだ。
誰からか着信がきたんだ。
「李桜、電話」
たぶん、兄ちゃんだ。
心配して連絡してくれたのかな?
もう10時だもんな。
嬉しくて、急いでケータイを取りに行こうとした。
けど
俺は立ち上がったまま動かなかった。
「李桜…?」
不思議そうに俺を見るももの手を引いて、隣に座らせる。
そして、バイブ音が聞こえてこないようにももを後ろから抱き締めて耳を塞いだ。
ドクドクとももの心臓の音が聞こえる。
その音だけに集中するようにすれば、バイブ音は聞こえてこなかった。
…なにを期待しているんだ?
ケータイを取りに行こうとしたとき、頭の中にこの声が聞こえてきた。
それは自分の声であり、自分の声ではないようだった。
なにを期待しているんだ?…そう問われて、ハッとした。
そうだよ。
なにを期待しているんだろう。
俺は今日、兄ちゃんと華恋が…
そうだ。俺は見たんだよ。
兄ちゃんは、俺じゃなくて華恋を選んだんだ。
なのに、俺を心配なんてするか?
華恋が家にいるのに。
もし、電話に出たら…
「李桜…」
言われる言葉は
別れよう。じゃないのか…?
「…部屋から、ケータイを出して…」
聞きたくない。
「わかった。大丈夫だから、落ち着いて」
怖いよ…
嫌だよ、兄ちゃん…
お願い。俺を捨てないで……