兄弟的同性愛事情
カーテンの隙間から光が見え始める。
全然寝れないまま朝が来た。
一時間寝れば起きて、また寝て。
そんなことを繰り返していたせいで、全く寝た気がしない。
寝不足のせいで頭痛までする。
…身体、だるい…。
ゆっくりと息をはく。
向き合って寝ていたももの前髪が、俺の息で少し揺れた。
「おはよ、李桜」
目をつぶったまま、ももが挨拶した。
寝ていると思っていた俺は、驚いて息を詰まらせて噎せてしまった。
「ごめん、大丈夫?」
笑いながら問いかけてくるももを恨めしく思いながらも、身体のだるさに負けて動こうとはしなかった。
「くま、すごいよ?今日は休む?」
学校に行く。
その発想すらなかった。
考えたくもない。
だって、学校には…兄ちゃんがいるから。
昨日のことを聞いてくるに違いない。
聞かないわけがない。
「なんで電話にでなかったんだ?!」
って、俺の気も知らないで一方的に怒鳴るように聞いてくるに違いない。
昨日何してた?!なんで折り返して連絡してこないんだ!!
とか。
想像できすぎて嫌になる。
布団にくるまってだんご虫のように丸まった俺をみて、ももはまた笑った。
「うん、わかった。今日はここにいていーよ。番書は私がとってくるからさ」
ももがベットから降りると、ちょうど部屋のドアが叩かれた。
入って。とももが言うと、ドアが静かに開いて漫画でよく見るような執事の服装をした優斗が俺たちに向かって一礼した。
「おはようございます。お嬢様、李桜様」
「おはよう。優斗、食事を運んできて。それと、今日は李桜ここにいるから、1日世話をよろしくね」
チラリと俺をみて、
「かしこまりました」
と優しく微笑んだ。
…けど、一瞬俺に向けた目は鋭く、まるで睨まれたようだった。
「じゃあね、李桜」
「…いってらっしゃい」
俺より早く朝食を済ませて、ももは真っ黒な車に乗って学校へ向かっていった。
残された俺は、静かにパンを食べ続ける。
その横では、優斗さんがももが食べた物の片付けをしていた。
…落ち着かない。
こんなに静かな食事は生まれて初めてだ。
部屋に響くのは小さな食器音だけ。
とりあえず、何か話さないと。
息苦しくてしょうがなくて、俺は適当に
「優斗さんは、朝ごはん食べないんですか?」
と聞いた。
時刻は8時。
なにも食べていないなら、さすがにお腹がへる時間だ。
「私は既に済ませてありますので、ご心配なく」
やんわりと言われた言葉には、やっぱりどこかとげを感じる。
俺は俺の食べ終わった食器を片付けている優斗さんをぼんやり見ながら、思っていたことを正直に言った。
「もものこと好きなんですか?」
あまりにも直球すぎる。
ここで「はいそうです。」なんて答える人がいるわけがない。
「もちろん」
ほらな。
……ん?
今、この人何て言った?
自分で聞いておいて、優斗さんの返事に驚いて固まった。
あっさり認めた。
返事はたったの4文字だった。
固まった俺をみて、優斗さんは可笑しそうに笑った。
「嫌いな方に尽くしたいと思う人はいないと思いますが」
笑いながら言ってくる優斗さんの瞳は、感情を隠しているように曇って見えた。