兄弟的同性愛事情
…あぁ、そっか。
ここに来てから気づいたけど、ももは優斗さんに冷たい。
目なんてほとんど会わせなくて、会話もあまりしたがらないように
わざと遠ざせけるような言い方をする。
でも、いつもももは
優斗さんの話をするときは、すごく
…何て言うか、女の子っぽくなる。
普段から可愛いけど、普段以上に可愛く見える。
でも、ももが優斗さんのことが好きとは言い切れない。
秀兄ちゃんを見るももの瞳もまた、女の子っぽくなるから。
はっきりわかるのは、
優斗さんはもものことが好きってことだ。
だから俺のことを睨むように見てきたんだ。
執事ってポーカーフェイスのイメージがあるけど、やっぱり人間。
「優斗さんて、顔に出やすいタイプなんだね」
わざと、鼻につくような、馬鹿にしたような言い方をすれば
思った通り。
わかりやすく不機嫌になった。
「心配しないで?俺にはこい……好きな人が他にいるから」
恋人がいるから。
そう言おうとしたけど、言えなかった。
どうせ、すぐに別れなくちゃいけなくなる。
想われてもいないのに、恋人なんて言えないし…。
「どうやってお嬢様に取り入ったかは知らないですが…危害を加えるようなことがあれば、私はあなたを殺しますよ」
忠誠心で動いてるってだけではなさそうだ。
個人的な感情。
目が本気になってるところが、それを決定づけている。
「他人の恋路に口出しするよりも、李桜様はご自分のほうをどうにかなさったほうが良いのでは?」
歩み寄られて渡されたのは、俺のケータイ。
「昨夜はずっと鳴り止みませんでした」
ずっと…
華恋がいたのに?
泊まってはいかなかったってこと?
…まさか。
あの雰囲気でヤらなかったわけないし、ヤったらそのまま寝て朝になる。
それなのに、ずっと鳴り止まなかったなんて、おかしい。
どーゆーことだろう…?
「勘違いは互いをすれ違わせ、二度ともとには戻れなくなりますよ」
「え…」
「失礼します」
一礼をして、優斗さんは部屋から出ていった。
まるで自分が経験したことがあるかのような言い方。
…執事になる前は、優斗さんにもそんな経験があったんだろうか。
俺のことを、絶対嫌いだと思うけど
それでも背中を押してくれた優斗さんは、ホントにいい人だと思う。
渡されたケータイは、着信があったと知らせる青色のランプがチカチカ光っていた。
ホーム画面を開くと
ー着信72件ー
72って…
ホントにずっと鳴ってたんだ。
弟がそんなに心配かよ?ブラコン過保護野郎。
悲しくなるくらい笑えてきた。
どーゆーつもりだよ。
わけわかんないよ、兄ちゃん…。
折り返すこともせずに、着信履歴を全部削除した。
何をするわけでもないから、とりあえず
眠気に逆らうことなく、俺は寝た。