兄弟的同性愛事情
兄ちゃんは生徒会の仕事が残ってるから。って言って、先に登校している。
普段なら、こーゆー時は秀兄ちゃんが迎えに来てくれるんだけど
今日はももの隣を歩いて登校。
なんか新鮮…。
通学路もいつもとは違うから、落ち着かないような、うきうきするような気持ちになった。
「歩いて登校するから」
ももは車の手配をしようとした優斗さんに冷たくそう言って、俺と連れて家を出た。
慣れない高級車に乗せられるより、歩いたほうがやっぱりいい。
俺に気をつかってくれたのかもしれない。
「音楽嫌だなぁ~」
お嬢様とは思えない、大きな伸びをしながら時間割りに文句を言うももに、心のなかでお礼を言っておいた。
坂を下ると、古本屋が何軒も並ぶ下町が見えてくる。
駄菓子屋とか、昔からあるお店が並んでいるこの通りが俺はとても好きだ。
昔からよく、兄ちゃん達と遊びに来ていた。
ここら辺で遊んでいると、お菓子が沢山もらえるからだ。
そういえば、この先の曲がり角を左に曲がると秀兄ちゃんの家だ。
ももの家からここって、わりと近いんだな…。
ももと秀兄ちゃんが話しているところは、4人で下校したあの日以来見ていない。
すぐには仲良しにならないか。
そんなことを考えていて、なんとなく
前から気になっていたことをももに聞いた。
「ももってさ」
「なによ?」
「秀兄ちゃんのこと、気になってるの?」
「はぁ?!?!!?」
ももが発した声が大きくて、少し響いて聞こえる。
通りを歩く人達が一斉に振り返る。
ももは慌てて俺の手を掴むと、引っ張って民家の影へ連れていかれた。
「李桜が変なこと言うから、目立っちゃったじゃないっ!!」
いやいやいや!!
俺のせいじゃなくて、ももが大声で叫んだからだろ?!
なんて反論すると話が長引くから、俺はあえて何も返さなかった。
「秀兄ちゃん?…それとも、優斗さん?」
『優斗さん』と言うと、ももの顔色が一瞬で変わった。
それから沈黙。
地雷を踏んだのかな…?
ももにとって優斗さんの話は地雷みたいだ。
…これは絶対訳ありだ。
いつもヘラヘラ笑っているのに
ももは泣きそうな顔になっていた。
「…ごめん。なんでもない」
学校行こう。と声をかけて、ももの手を握ると
「……どっちも好きじゃないよ」
と、小さく呟いて
わかりやすい作り笑いをした。
「そっか…」
ももにこんな顔をさせる優斗さんのことが、気にならない訳ではないけど
二人の間には何か…触れてはいけない部分がある。
直感的にそう思って、俺は何も言わずにももの手を引いて歩いた。
「おはよっ、李桜と…あ!ももちゃん、だっけ?」
なんてタイミングが悪い。
秀兄ちゃんの家へ続く道を通り過ぎようとしたとき、ちょうど秀兄ちゃんが出てきてしまった。
「ぉ、おはよー…」
顔をあわせたくないだろうと思って、ももを後ろへ隠すと
「はい、ももですっ!おはようございます!」
ももは俺の影から顔を出して、満面の笑顔で秀兄ちゃんに挨拶をした。
俺だけ動揺して、なんか変になってしまった。
ももはこーゆうときもこの顔か…。
一瞬で笑えるももの特技を羨ましく思う。
「秀都さんは、生徒会の活動に行かなくていいんですか?」
「へ?…あ」
「忘れてたんですか?!ダメじゃないですか!」
他愛もない話をする二人は、俺が思っているより全然仲が良さそうに見えた。
似た者同士。
そう思って、二人の後ろを歩きながら笑った。