兄弟的同性愛事情




俺は急いで席をたった。


ももを探さないといけない。そんな気がして。


ドアを開けて教室から出ると


ドンッ


と、誰かにぶつかった。


「危ないやないかッ!」


「ぁ、ごめんなさいっ」


ぶつかった反動で転んでしまった相手に謝ると


「あれっ、李桜!!」


「ライトっ!?ぉ、おはよっ」


「おはようさん!久しぶりやなー!」


そうだっ!ライトなら、ももがどこにいるのかわかるかも。


幼馴染みだし。


廊下にいたなら姿を見たかもしれない。


「ライト、ももがどこにいるかわかる?」


「なんや、なんかあったんか?」


「…ん…」


目をそらすと、ライトが何かを察したように「あぁ」と声を漏らした。


「そーゆーことなら、たぶんトイレだな!アイツの避難場所は、一番奥のトイレやから」


避難場所がトイレ?!


かなり驚いたのと同時に、ため息が出た。


それじゃあ迎えに行けないじゃん…。


…けど、ほうっておけない。


「たぶん、そこのトイレにおるよ」


「ありがと!」


1階のトイレに走って逃げ込んだなら、一瞬にしていなくなったことも説明がつく。


教室のドアを閉めて廊下を歩いていくと、左腕を引かれた。


引いたのはライト。


踏み出した瞬間に引かれたから、転けそうになった。


「トイレは女子トイレやぞ?!入ったら、いくら…かっ、可愛い李桜でも問題があるだろ?!」


今、ものすごく失礼なこと言われた気がするんだけど


そこはまぁ、無視しよう。


というか、ものすごい勘違いされてる?!


「誰がトイレに入るなんて言ったよ?!入口付近で待ってるだけだよ!!」


「な、なんだ…」


ったく…。なに考えてるんだか。


やっぱりライトはバカなのかも。


気を取り直してトイレへ向かうと


なぜかライトまでついてきた。


「なんでライトまで来るの…?ホームルーム始まるよ?」


「だぁほ!友達のことほかっとけないやろーが!!」


廊下の壁にもたれかかって、女子トイレの方を気にしながら待つ。


自分が言われた訳ではないけど、なんか感動した。


ライトの目は真っ直ぐで、嘘なんて少しも入ってない。


こんなに真剣に相手のこと考える人なんて、そうそういない。


「…ライトって、いい奴だよね」


「そーか?」


苦笑いしながら答えるライトは、ふと真面目な顔になって


「昔みたいなことになるのは、嫌だからな…」


「え?」


また笑ったライトの顔は、ももの作り笑いと似ていた。




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